所蔵品から 資料ナンバー2527・2528その他 火星が接近 の話       資料班


本年の火星

朝日新聞 1946年1月8日号
「火星の夢 上」 より
「本年の火星」 (右から左に読む)

 3月になって、だいぶ日暮れが遅くなってきました。日が沈んで暗くなってくると、夜空に明るい惑星がいくつか見られます。西の空で明るいのが金星と木星。振り返って東の方には、赤っぽい火星が浮かんでいます。
 火星についての読み物が、終戦後すぐの新聞にたしか載っていた、と思い出して、探してみました。どんな物だったかというと、

 朝日新聞の1946(昭和21)年1月8日・1月9日「火星の夢」という記事でした。
 滋賀県栗太郡上田上村に住んでいる山本博士が、古今の火星学者やSF作家のH.G.ウェルズと共に、火星行きのロケットに乗って、火星にたどり着いて火星人と出会い、(テレパシーで)会話をして、と思ったら夢だった、という話なんですよ。今回ちゃんと読んでみたら。

 1946年1月10日に地球と火星が接近するのにちなんだ記事のようです。
 火星についてのかなり詳しい説明もあります。衛星が2つだとか、687日で太陽のまわりを一周するとか。重力は地球の4割弱だとか。火星の模様(地形?)の名称だとか。
 火星は赤っぽい色の中に緑色の模様が見られるのですが、それは「最近の学説では厖大(ぼうだい)な植物の群生であろうと考えられている」と書かれています。1946年には、火星の上には生命体があると思われていた、みたい。

 終戦後初めてのお正月、1946年1月に接近した火星は、「この新年にはあたかも世界平和成った地球を祝福するかのように近づいてくる感じであった」と表現されています。まるで火星接近が地球の平和の象徴みたいな話になっています。火星といえば、軍神マルス。戦争の神様なんだけど。

 山本博士が乗り込んだ火星ロケットの燃料は、原子力です。1キログラムの石炭が燃えると8キロカロリーのエネルギーになるところ、「ウラニウム」だと1キログラムで1700万キロカロリー、200万倍の力を持つ、と。前の年(1945年)の8月に核兵器の攻撃を受けたばっかりの日本ですが、原子力は夢のエネルギーのような扱いです。

 無数の難問題をくぐりぬける宇宙ロケットを「かの清教徒たちが北米に渡ったメイフラワー号」にたとえています。半年前は敵国だったアメリカのことをこんな風にいうのって、ありなのか?と、考えてしまいました。

H・G・ウェルズが科学的に想像して描いた火星人

朝日新聞 1946年1月9日号
「火星の夢 下」 より
「H・G・ウェルズが科学的に想像して描いた火星人」

 読んでいてちょっとおもしろいと思ったところを紹介します。くだらないといえばくだらないのですけど。
 火星には衛星が2つあるので、「明月や池をめぐりて夜もすがら」を「2重にした美しさ」だとか。

 もうひとつ。火星人の間で、顔をギリシャ風とかハリウッド風とかに整形するのがはやって、その後わけのわからない方向に流行が歪んでいって、鼻を10メートル20メートルの高さにする火星人もいたらしい。火星の政府は「これらの整形に対し都市建築の制限規則をあてはめて取締る必要にさえ迫られた」とか。ちょっとおもしろかった。

H・G・ウェルズが科学的に想像して描いた火星人

「高等小学理科書第2学年」1931年 より
「第三十二 恒星・惑星」

 火星ということでもうひとつ。昭和6年、ということは1931年の理科の教科書(高等小学理科書第2学年)から。惑星の図。
 惑星は水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星、の8つ。最近惑星ではなくなった冥王星はどういう扱いなのか。調べてわかったのですが、
 冥王星は1950年代に発見されました。まだ見つかっていなかったのです。



「火星の夢」全文をご覧になりたい方はこちらからどうぞ。新聞記事がPDFで 読めます。
http://www.peace-aichi.com/20120323_kaseidream.pdf

ピースあいちウェブサイトの、収蔵品の紹介のページからは、バックナンバーの関連画像が見られます。よかったらこちらもどうぞ。
http://www.peace-aichi.com/05_objects.html


おまけ。理科の教科書から。

たこ

昭和6年(1931)年「尋常小学理科書第六学年」より
たこ

とかげとカメレオン

大正10(1921)年「動物学教科書女子用」より
第三綱爬虫類 第一目蜥蜴(とかげ)類 やもりとカメレオン

腕時計・文具・ランドセルの広告

明治33(1900)年「小学理科」より
酸素ノ製法(二)